今回は、中井正子先生の独特のタッチと奏法のお話です。
中井先生は、日本におけるフランス音楽の第一人者で、東京芸大ピアノ科の講師をされています。その演奏の音色の美しさや明瞭さ、優れた表現力には定評があります。
その先生が「ピアノって本当に引っ搔くようにして弾くものなのよ。」と話されているのを聞いた時、是非ともその奏法を学びたいと思ってレッスンをお願いしたところ快く承諾してくださり、過去数回、レッスンを受ける機会を得ました。
その時に学んだのが引っ搔くようなタッチの奏法です。「ひっかき奏法」と密かに名付けました。
この奏法は、中井先生がパリ音楽院をトップで卒業してから更にロンドンに渡り、ロンドンアカデミーのマリア・クルチョ氏から学んだ奏法で、驚くことにリストから伝わっている演奏方法だそうです。
私も教えていただいた、この素晴らしい奏法を何とか完成させて、生徒たちにも伝えていきたいと研究取組中です。
音色が多彩になり、目指す音が思うように出せるようになります。
演奏の自由度がかなり増します。一皮むけた演奏になること間違いなしです。
当時の聴衆を虜にしたリストの音色に思いを馳せながら、今日も「ひっかき奏法」に取り組んでおります。