昨年、近藤嘉宏先生のレッスンを受けた折に、同時にリサイタルが開催されました。
プログラムの曲はどれもこれも大変素晴らしかったのですが、特にベートーヴェンのソナタ「熱情」を聴いた時にその迫力と素晴らしさに尋常ではないものを感じました。
ベートーヴェンですのでピアノとフォルテが激しく入れ替わり、それだけでも迫力満点なのですが、音量だけでは出せない迫力というものがあり、それが多彩な音色、ニュアンス、タッチから生み出されていることを痛感しました。
情熱がほとばしるところでは、情熱に身を任せて激しく弾いたのでは音楽をコントロールが出来なくなって音が汚くなるばかりです。
ですから情熱の必要な個所では、むしろ冷静になって音色、ニュアンス、タッチにかけるエネルギーをコントロールすることに情熱を傾ければ、普通では奏でられない「熱情」を紡ぎだすことが出来るようです。
氏のレッスンを受けた時に、私が弾いた同じ部分を見本演奏してくださり、その余りの音楽の音色の豊かさの違いに「これこそ近藤先生のタッチだ」と感動しました。
この経験と「丁寧な演奏が出来ていますね」の有難い言葉を糧に、豊かな音楽を目指して頑張ります。
そして私のピアノ教室の生徒たちにもその多彩な音色、タッチ、ニュアンスを伝えていければ・・・と思います。
コンサートの後に少し楽しいトークの時間があって「熱情ソナタ」にまつわるお話を聞かせてくださいました。
近藤嘉宏先生は語る・・・
若いころは、「熱情」を弾くとそのうちに演奏中でも指がツルツルすべるようになって困っていたんですよね。
汗をかくからかなあ・・・・と長い間思って、ハンカチで手を拭いたりして‥それでも滑り始めると指先をシッカリ滑らないようにコントロールしてたんです。
でも、滑らないように指先をしっかりコントロールして熱情を弾き続けると、爪と指の間が裂けてしまって、すごく痛くなって弾けなくなるから困るんですよね。
(わあ、痛そうですね💦・・大丈夫ですか?)
ところが年を重ねてきて、年のせいなのかは分からないけど・・それが汗ではなくて、手からにじみ出た油だという事が分かってきたんですよ。
それからは、脂汗の対策ですよね。
横山幸雄さん(ピアニスト)が言ってたんですけど、やっぱり「熱情ソナタ」を弾くと指がツルツル滑って困るんだそうです。
そして下手するとやっぱり爪と指が裂けて、痛くてとても困ることになるんだそうです。
そこで彼は、弾く前に爪と指の間をボンドでくっつけてしまうんだそうです (;゚Д゚)
「えーっ、そんなことして大丈夫ですか???」ってビックリして聞いたんですけど
「全然平気ですよ (⌒∇⌒)」と言ってました。・・・・・・・
♪♪♪♪♪♪♪♪♪
ピアニスト横山幸雄氏のボンドの話にはビックリしました(゚д゚)!
天才ピアニストの方々も、同じ人の体の持ち主なので、色々とご苦労されているのですね。😢
そういう見えないたゆまぬご苦労と、持って生まれた才能と、努力の賜物の素晴らしい演奏だったのですね。
感動のお話でした。ご苦労話を楽しく聞かせてくださって、ありがとうございました。
こういうお話を伺って、益々コンサートが楽しみになりました。😊